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人民元現預金2400兆円、日本の3倍! 膨らむ中国マネー・バブル

2015.03.01

人民元現預金2400兆円、日本の3倍! 膨らむ中国マネー・バブル 資本逃避加速で崩壊の恐れ

先週半ばまで、中国の春節「爆買い」ツアーは、世界の主要都市を席巻した。

チャイナマネー・パワーの源泉は人民元の現預金にある。その総額は昨年末で20兆ドル強(約2400兆円)で、実に日本の3倍、米国の1・7倍。増殖速度もすごい。年間で2兆ドル(約240兆円)増えている。日本の8倍、米国の3倍だ。発券銀行の中国人民銀行がおカネを1増発すると、現預金は5以上増える。

人民銀行を支配する中国共産党の打ち出の小槌(こづち)。可能にするのは米国を中心とし、欧州も日本もどっぷり漬かる国際金融システムである。

2008年9月の「リーマン・ショック」後、米連邦準備制度理事会(FRB)は昨年末までにドル資金発行残高を4倍に増やしたが、人民銀行はドルに見合う元を増発した。人民銀行は中国に流入するドルを自ら決めた交換レートで全面的に買い上げて、相当額の元資金を発行する。ワシントンは元安には厳しく反応するが、人為的な外為操作は見て見ぬふりだ。元の量が増える金融緩和効果で中国市場が拡大することは、本国市場で苦戦するビッグ3など米企業にとっても利益になる。

北京の思い通りに外貨が中国に流入するとは限らない。主な流入源は貿易黒字と外国からの直接投資だが、輸出は低迷し、人件費高騰を嫌った外国企業は他のアジアに生産をシフトさせている。それでも外貨流入方法はある。海外からの借り入れである。

国際決済銀行(BIS、本部スイス・バーゼル)によると、中国の海外の銀行からの借り入れ残高は14年9月末、1兆700億ドルで、前年比2800億ドル増えた。世界全体での2700億ドル増をしのぐ。ということは、国際金融で稼ぐ米欧日などの大手銀行を、もっぱら対中国金融が支えていることになる。北京は国際金融界の協調のもと元資金を供給し、富裕層は海外で買い物に狂奔する。

銀座、ニューヨーク五番街も、ロンドン・シティー、ニューヨーク・ウォール街も毛沢東のお札、元のチャイナマネー、で踊る。そんなざまで世界は大丈夫か。そう、安心している場合ではない。

グラフは投機性の高い資金の流出入状況を示す。中国の国際収支統計をもとに、筆者が推計した。当局が国境を越える外貨をすべて売り買いする中国の場合、対外資金収支は公的外貨準備に反映する。資金収支のうち貿易、直接投資、利子・配当分の合計額と外貨準備の増減額の差額は逃げ足が速い投機性資金である。中国語では「熱銭」と呼ばれる。熱銭は、中国国家統計局が金融収支項目として把握している分と、そうでない「正体不明」に分かれる。正体不明分には党幹部の不正が絡むはずだ。プラスは流入で、マイナスは流出で「資本逃避」を意味する。

昨年1年間の資金流出額は4200億ドルで統計のある1998年以降、最大規模になった。リーマン・ショック直後の流出額約年2千億ドル、12年6月の同3千億ドル超をはるかにしのぐ。12年の場合、胡錦濤前指導部から習近平体制に移行する直前に、巨額の不正蓄財資金が海外に逃げた。さらに、不動産投機の資金が不動産相場の下落を嫌って流出する傾向も時期によっては出てくる。

資金の流出入がほぼ一貫して連動するのが、景気動向である。鉄道貨物輸送量は李克強首相が信頼する景気指標の一つである。モノが国内総生産(GDP)の約5割を占める中国では景気実体は物流に反映しやすい。すると、最近の中国経済はGDPの実質伸び率7%台どころではなく、マイナス成長に陥っていることがわかる。輸入量、電力消費など他の停滞ぶりとも一致する。

はっきりしているのは、鉄道貨物輸送量の落ち込みに連動するように資金が流出することだ。景気の低迷は今後も続く。となると、資金の流出はまだまだ増えるし、加速しかねない。

資金流出を止めるためには利上げし、元相場を切り上げるしかないが、経済が沈む。逆に元を切り下げると、資本逃避が加速する。元安では対外債務の重圧がぐっと高まり、信用不安になろう。

対外債務の大半には党幹部が関与し、多くは不動産を担保にしている。不動産市場崩落で日米欧の貸し手は不良債権を抱える。「爆買い」が示すのはバブル化したチャイナマネーであり、資本流出は、そのマネー・バブルの崩壊を暗示する。その時、ブランド物が売れなくなる程度ならよい。株式を含め世界の市場全体が大きく揺れるだろう。

 

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